
犬猫が下痢や軟便をしたとき、まず何を確認すればよいのでしょうか。便の硬さ・回数・色・血や粘液、食欲や元気などのチェックポイントと、考えられる原因、動物病院を受診する目安をわかりやすく解説します。
いつもより、うんちがやわらかい。
形はあるけれど、つかむと崩れる。
泥のような便になった。
水のような下痢が出た。
犬猫の便が突然変わると、
「何か悪いものを食べた?」
「フードが合わなかった?」
「病院へ行ったほうがいい?」
と心配になりますよね。
下痢や軟便の原因はひとつではありません。
食事の変化など一時的なものから、寄生虫、感染症、炎症性の腸疾患など、さまざまな原因が考えられます。猫ではストレスや急な食事変更でも一時的な軟便・下痢が起こることがあります。
まず大切なのは、
「やわらかかった」という一点だけで判断しないこと。
便の状態と、その子の全身状態を一緒に見てみましょう。
実際には、軟便と下痢の間に明確な一本の境界線があるわけではありません。
便は、
硬い
↓
形のある便
↓
やわらかいけれど形はある
↓
形が崩れる
↓
泥状
↓
水様
というように連続して変化します。
そのため、
「軟便だから大丈夫」
「水下痢だから必ず重症」
と便の硬さだけで判断することはできません。
便の状態に加えて、
回数・量・色・血・粘液・食欲・元気・嘔吐
なども確認することが大切です。消化器疾患の評価では、便の硬さだけでなく、色、量、血液・粘液の有無なども重要な情報になります。
犬猫の便には個体差があります。
普段から少しやわらかめの子もいれば、しっかりした便をする子もいます。
だから大切なのは、
一般的な理想便と比べるだけではなく、その子の「いつも」と比べること。
たとえば、
いつも1日1回、形のある便
↓
今日は4回、少量のやわらかい便
なら、
単に「少しやわらかい」だけではなく、回数も大きく変化しています。
こうした変化も重要な情報です。
犬猫の下痢には、さまざまな原因があります。
たとえば、
急なフード変更
食べ慣れないもの
食事への反応
ストレス
寄生虫
感染症
腸の炎症
薬剤の影響
消化・吸収に関係する病気
その他の全身性疾患
などです。猫でも下痢は消化管疾患だけでなく、場合によっては腎臓・肝臓・甲状腺など腸以外の疾患に伴うことがあります。
つまり、
「下痢=フードが合わない」
とは限りません。
食事を急に変更したあとに、便がやわらかくなることがあります。猫についても、急な食事変更が短期間の下痢につながることがあるとされています。
そんなときは、
いつフードを変えた?
何から何へ変えた?
一気に切り替えた?
おやつも変わった?
人の食べ物を食べなかった?
などを振り返ってみましょう。
ただし、フード変更と同じ時期に下痢が始まったからといって、必ずフードだけが原因とは限りません。
長引く場合や、ほかの症状がある場合は別の原因も考える必要があります。
特に子犬・子猫、多頭飼育、保護された犬猫などでは、消化管寄生虫も確認したい原因のひとつです。
猫では回虫などの寄生虫や原虫によって、
下痢、粘液便、血便、嘔吐、食欲低下
などがみられることがあります。
便の見た目だけで、
「寄生虫ではなさそう」
と判断することはできません。
必要に応じて動物病院で便検査などを行います。
下痢のときは、排便回数も重要です。
特に大腸が関係する下痢では、
少量の便を何度もする
急いでトイレへ行く
排便時にいきむ
粘液が混じる
鮮やかな赤い血が混じる
といった特徴がみられやすくなります。
反対に、小腸が主に関係する場合には、一回の便量が多くなったり、体重減少を伴ったりすることがあります。
ただし、これだけで病変部位や病気を確定することはできません。
あくまで、動物病院で原因を探すための手がかりです。
便の表面に、
透明〜白っぽいゼリー状のもの
が付くことがあります。
これは粘液で、大腸が刺激されたり炎症を起こしたりしているときに見られることがあります。
大腸性の下痢では、粘液便が比較的よくみられます。
一度だけ少量ついていたからといって原因を特定することはできませんが、
何度も続く
血も混じる
排便回数が増えている
いきんでいる
場合は、動物病院への相談を考えましょう。
血便にも見え方の違いがあります。
便の表面などに鮮やかな赤い血が見える場合、大腸や直腸など下部消化管からの出血が手がかりになることがあります。
黒くベタッとしたタール状の便はメレナ(黒色便)と呼ばれ、胃や上部小腸などからの出血が示唆されます。
ただし、便の色だけで出血部位や原因を確定することはできません。
特に黒いタール状便や、出血量が多い場合、全身状態が悪い場合は早めに受診してください。
下痢をしたときは、便だけでなく犬猫自身を見てください。
確認したいのは、
食欲はある?
元気はある?
吐いていない?
水は飲めている?
お腹を痛がっていない?
体重が減っていない?
発熱はない?
ぐったりしていない?
というところです。
下痢が続くと、水分や電解質が失われ、脱水につながることがあります。
特に子犬・子猫や高齢の犬猫では、全身状態の変化にも注意しましょう。
ここは少し意外かもしれません。
犬の急性下痢に関するWSAVA/ENOVATのガイドラインでは、重症度は血便の有無だけではなく、元気・循環状態・脱水などの全身状態を中心に評価する考え方が示されています。
つまり、
血がある=必ず重症
でも、
血がない=安心
でもありません。
便の見た目だけではなく、
その子がどのくらい具合が悪いのか
を見ることが重要です。
必ずしも必要ではありません。
犬の急性下痢について、WSAVA/ENOVATのガイドラインでは、全身状態が軽度〜中等度のケースでは抗菌薬は必要ないとしています。抗菌薬の過剰使用は腸内細菌叢への影響や薬剤耐性の問題にもつながります。
もちろん、感染症など抗菌薬が必要なケースもあります。
大切なのは、
「下痢だからとりあえず抗菌薬」
ではなく、状態と原因に応じて獣医師が判断することです。
動物病院へ行くときには、
便の写真
を撮っておくと役立ちます。
さらに、
いつから?
1日何回?
形・硬さは?
色は?
粘液は?
血は?
量は?
嘔吐は?
食欲・元気は?
最近フードを変えた?
薬を飲んでいる?
などを記録しておくと、獣医師に状況を伝えやすくなります。
便はすぐ流してしまわず、健康状態を伝えてくれる情報のひとつとして観察してみましょう。
下痢や軟便が一度あっただけで、元気・食欲があり、その後いつもの便に戻るケースもあります。
一方で、
水のような下痢を何度もする
下痢が続く・繰り返す
嘔吐もしている
食欲がない
元気がない・ぐったりしている
脱水が疑われる
大量の血が混じる
黒いタール状の便が出る
強くいきむ
体重が減っている
といった場合は動物病院へ相談してください。猫では下痢が1〜2日以上続き、食欲低下・元気消失・嘔吐などを伴う場合は、早めの受診が勧められています。
また、子犬・子猫、シニア、持病のある犬猫では、より早めの相談を考えましょう。
犬猫の下痢・軟便には、さまざまな原因があります。
大切なのは、
硬さ・形
回数
量
色
血・粘液
嘔吐
食欲
元気
を一緒に見ること。
そして、
「いつもの便と何が違う?」
という視点を持つことです。
一度の便だけでは分からないこともあります。
だからこそ、毎日のうんちを見ておくことが、犬猫の小さな変化に気づく手がかりになります。
[犬猫の便の硬さ・形をチェック|理想的な便とは?]
[犬猫の便の色|茶色・黄色・緑・黒・赤、何が違う?]
[血便・粘液便|赤い血やゼリー状の粘液が出たら?]