犬猫の吐き戻し・吐出とは?|嘔吐との違いと見分けるポイント

犬猫の「吐き戻し」は嘔吐とは違うことがあります。吐出とは何か、嘔吐との違い、未消化のフードが出る理由、食道の病気との関係、受診の目安をわかりやすく解説します。


犬猫の吐き戻し・吐出とは?|嘔吐との違いと見分けるポイント

犬猫が食べたものを口から出したとき、

「また吐いた」

と思うことがありますよね。

でも実は、

「嘔吐」ではなく「吐出(としゅつ)」

かもしれません。

一般には「吐き戻し」と呼ばれることもあります。

どちらも口から食べ物や液体が出てくるため見た目は似ていますが、体の中で起きていることは違います。

この違いを知っておくと、動物病院で症状を伝えるときにも役立ちます。


1|「吐出」って何?

吐出とは、主に食道にある食べ物や液体が、胃に到達する前に口へ戻ってくる現象です。

嘔吐のように強い腹筋運動を伴わず、比較的受動的に起こるのが特徴です。

たとえば、

ごはんを食べる
↓
しばらくして頭を下げる
↓
前触れがほとんどなく、食べ物がスルッと出る

ということがあります。

飼い主さんから見ると「吐いた」ように見えますが、これは吐出の可能性があります。


2|嘔吐とは何が違う?

ここが一番大切です。

嘔吐

胃や上部小腸の内容物を、体が能動的に吐き出す動作です。

吐く前に、

気持ち悪そうにする
よだれが出る
唇をなめる
何度も飲み込む
えずく
お腹に力が入る

などがみられることがあります。

吐出

主に食道の内容物が、比較的受動的に戻ってくる現象です。

突然起こる
強くえずかない
腹筋の大きな収縮がない
未消化の食べ物が出る

といった特徴があります。

つまり覚え方は、

嘔吐=「オエッ、オエッ」と体を使って吐く
吐出=「スルッ」と戻ってくる

です。

ただし、実際には飼い主さんだけで区別しにくいケースもあります。


3|出てきたフードを見ると分かる?

吐出では、食べ物が胃まで届いていないことがあるため、

ほとんど消化されていないフード

が出てくることがあります。

また、食道の形を反映して細長い筒状になっていることもあります。

ただし、

「未消化なら絶対に吐出」ではありません。

食後すぐに嘔吐した場合にも、十分に消化されていない食べ物が出ることがあります。

出てきたものだけでなく、出る前の動きも一緒に観察することが大切です。


4|食後すぐ起こりやすい?

吐出は、食べたり飲んだりしたあと比較的早く起こることがあります。

そのため、

「食べて5分くらいで、そのまま出てきた」

という情報は診察時にも役立ちます。

ただし、食後すぐ=必ず吐出というわけではありません。

時間だけではなく、

えずいた?
お腹に力が入った?
気持ち悪そうだった?
未消化だった?

まで確認しましょう。


5|どうして吐出するの?

吐出を繰り返す場合には、食道の問題を考える必要があります。

原因としては、

食道炎
食道内の異物
食道狭窄
食道の運動異常
巨大食道症
先天的な食道の異常

などがあります。食道炎でも、吐出、よだれ、繰り返す嚥下、食欲低下、飲み込みにくさなどがみられることがあります。

つまり、

「吐き戻した=食べるのが速かっただけ」

とは限りません。


6|巨大食道症とは?

吐出を繰り返すときに知っておきたい病気のひとつが、

巨大食道症(メガエソファガス)

です。

食道が拡張し、食べ物や水を胃へ運ぶ働きが低下します。

代表的な症状が吐出です。犬では、未消化の食べ物を戻す、体重が減るなどの症状がみられることがあります。

先天的に起こる場合もあれば、成犬になってから別の病気などに伴って起こる場合もあります。

もちろん、

一度吐き戻しただけで巨大食道症という意味ではありません。

何度も繰り返す場合に調べる原因のひとつです。


7|異物が食道につまっていることも

犬猫が飲み込んだものが、食道につまることもあります。

犬では骨などが代表的ですが、そのほかにもさまざまな異物が食道内にとどまる可能性があります。

食道異物では、

急によだれが増える
何度も飲み込もうとする
えずく
吐出する
飲み込みにくそうにする

といった症状がみられることがあります。

猫でも骨、針、糸などが食道異物になることがあります。

異物を飲み込んだ可能性がある場合は、様子を見続けず動物病院へ相談してください。


8|吐出で注意したい「誤嚥性肺炎」

吐出を繰り返す場合に特に注意したいのが、

誤嚥性肺炎

です。

戻ってきた食べ物や液体を誤って気管・肺へ吸い込んでしまうことで起こります。

巨大食道症でも重要な合併症で、

咳
発熱
呼吸が速い
呼吸が苦しそう

などの呼吸器症状がみられることがあります。

吐き戻しに加えて呼吸の異常がある場合は、早めの受診が必要です。


9|「食べるとき」の様子も見てみよう

吐出があるときは、食べたあとだけではなく、食べている最中も観察してみましょう。

たとえば、

飲み込みにくそう
何度も飲み込む
よだれが多い
食べると痛そう
首を伸ばす
食べたいのに食べにくそう

といった様子です。

食道炎や食道狭窄などでは、吐出だけでなく、嚥下の異常や痛みなどがみられることがあります。


10|「また食べたがる」こともある

吐出したあと、犬猫がすぐに食べ物へ戻っていくことがあります。

「こんなに食欲があるなら大丈夫かな?」

と思うかもしれません。

しかし吐出では、食べ物が胃まで十分に到達していない場合があります。

そのため、食欲が残っていることだけでは問題がないとは判断できません。

繰り返していないか、体重が減っていないかなども確認しましょう。


11|動画を撮っておこう

吐出と嘔吐を見分けるうえで、とても役立つのが動画です。

可能であれば、症状が起きたときにスマートフォンで撮影しておきましょう。

特に、

出る直前の様子
えずきの有無
お腹の動き
首や頭の動き
食べ物が出てくる瞬間

が分かると役立ちます。

猫では咳と嘔吐が紛らわしい場合もあり、VCAも動画を獣医師に見せることが鑑別の助けになるとしています。


12|こんなことを記録しておこう

吐き戻しがあったら、

食後何分で起きた?
何を食べた?
水も戻した?
未消化だった?
筒状だった?
えずいた?
腹筋に力が入った?
よだれは?
何回起きた?
体重は減っていない?
咳はしていない?

などを記録してみましょう。

出てきたものの写真と、吐き戻す瞬間の動画も診察時の情報になります。


13|こんなときは動物病院へ

特に、

吐出を繰り返す
水まで戻してしまう
飲み込みにくそう
よだれが多い
体重が減っている
食欲が低下している
異物を飲み込んだ可能性がある
咳をする
発熱している
呼吸が速い・苦しそう

といった場合は、動物病院へ相談してください。

繰り返す吐出では、単なる食べ方だけではなく、食道の病気を調べる必要がある場合があります。


まとめ|「吐いた」だけでなく、どう出てきたかを見る

犬猫が食べ物を口から出したとき、

全部を「嘔吐」と考えないことがポイントです。

確認したいのは、

えずいた?
お腹に力が入った?
突然スルッと出た?
未消化だった?
食後どのくらい?
何度も繰り返している?
咳はない?

ということ。

嘔吐は主に胃や上部小腸から内容物を能動的に吐き出す現象。
吐出は主に食道から内容物が受動的に戻ってくる現象。

似て見えても、この2つは同じではありません。

「吐いた」で終わらせず、どうやって出てきたかを見ることが、犬猫の体で起きていることを理解する大切な手がかりになります。

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