
犬や猫は何歳からシニアなのでしょうか。犬は体格や犬種によってシニア期が異なり、猫では10歳を超えるとシニアとする区分があります。年齢とともに変化しやすい体重、筋肉、食欲、行動、睡眠、トイレなど、毎日の暮らしで確認したいポイントを解説します。
「うちの子も、もうシニアなのかな?」
犬猫と長く暮らしていると、ふと気になることがあります。
以前よりよく寝るようになった。
走る時間が短くなった。
ジャンプする前に少しためらうようになった。
でも、何歳になったらシニアなのでしょうか?
実は、犬と猫では考え方が少し違います。
そして何歳であっても大切なのは、
「シニアになった日から突然老化が始まるわけではない」
ということ。
年齢はひとつの目安として、その子の体や暮らしの変化を見ていきましょう。
2021年のAAHA/AAFP猫ライフステージガイドラインでは、猫を次のように区分しています。
子猫:1歳未満
若い成猫:1〜6歳
成熟期:7〜10歳
シニア:10歳を超える猫
つまり、ひとつの目安としては、10歳を超えるとシニア期です。
ただし、これは10歳の誕生日を境に突然「高齢になる」という意味ではありません。
シニアケアの専門ガイドラインでは、猫によっては8歳ごろからシニアとして考えたほうがよい場合もあり、品種や遺伝的な要因などによる個体差も指摘されています。
年齢区分はあくまで健康管理を考えるための目安です。
犬は、猫より少し複雑です。
「7歳になったらシニア」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、現在のAAHAの犬ライフステージガイドラインでは、
「○歳からシニア」と一律には決めていません。
犬は犬種や体格などによって寿命に大きな違いがあるためです。
AAHAでは、犬のシニア期を、
その犬に予想される生涯の最後の25%
と定義しています。
つまり、
「犬は何歳からシニア?」の答えは、その子によって違う
ということになります。
犬では体格や犬種によって、成熟や加齢の進み方、予想される寿命が異なります。
そのため、
小型犬も大型犬も同じ年齢からシニア
とは考えません。
AAHAも犬のライフステージについて、年齢だけでなく、犬種・体格・生活・健康状態などを含めて個別に考えることを勧めています。
インターネットでは、
「大型犬は○歳から」
「小型犬は○歳から」
という表を見かけることがあります。
分かりやすい目安にはなりますが、境界線が厳密に決まっているわけではありません。
その子自身の変化を見ることが大切です。
シニアという言葉を聞くと、
「もう高齢だから……」
と少し寂しく感じるかもしれません。
でも、
シニアは病名ではありません。
AAHAも、シニアという言葉は「年齢を重ねたペット」を表すもので、犬種や種による加齢の違いがあるため、すべての犬猫に共通する特定年齢はないとしています。
元気に散歩をするシニア犬もいます。
よく食べ、遊び、高い場所へ上がるシニア猫もいます。
大切なのは、
「シニアだからできなくなる」と決めつけないこと。
今のその子に合わせた健康管理を考えていきます。
加齢に伴う変化の現れ方には個体差があります。
毎日の暮らしでは、たとえば、
体重
筋肉量
食欲・食べ方
飲水量
活動量
歩き方
睡眠
感覚
行動
排泄
などを見ていきます。
犬では正常な加齢に伴って、視覚や聴覚などの感覚や認知面に変化が生じることがあります。一方、病的な認知機能低下では、見当識、家族との関わり、睡眠・覚醒、排泄、活動量などに変化がみられることがあります。
ただし重要なのは、
「変化=全部老化」とは限らない
ことです。
年齢を重ねるにつれて、以前より活動量が減ったように見えることがあります。
でも、
「シニアだから寝ていて当然」
だけで終わらせないようにしましょう。
たとえば、
以前は散歩と聞くとすぐ起きた
↓
最近は呼んでも起きてこない
あるいは、
昼寝は増えた
でも食事や散歩の時間には元気に起きる
では、状況が違います。
睡眠時間だけではなく、
起きているときの元気や反応も一緒に見る
ことがポイントです。
シニア期にぜひ見てほしいのが、
「できる・できない」だけではなく、「やり方が変わっていないか」
です。
たとえば、
階段をゆっくり上るようになった
ソファへ一度で上がらなくなった
ジャンプする前にためらう
散歩の距離が短くなった
立ち上がるまで時間がかかる
など。
こうした変化を、
「年だから仕方ない」
と考えてしまうことがあります。
でも、関節の痛みや筋力の変化などが関係している可能性もあります。
動き方の変化も、体からの情報のひとつです。
シニア期では、体重だけを見ると変化を見逃すことがあります。
たとえば体重が同じでも、
筋肉が減って、体脂肪の割合が増えている
ことがあります。
反対に、
「少し痩せただけ」
と思っていたら、筋肉量が減っている場合もあります。
そのためシニア期では、
体重+体型+筋肉
をセットで見ることが大切です。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、体重だけでなくBody Condition Score(BCS)やMuscle Condition Score(MCS)を含めた栄養評価が重視されています。
シニアになると、
食べる量が変わった
食べる速度が遅くなった
硬いものを食べにくそうにする
食べこぼしが増えた
といった変化がみられることがあります。
ここでも、
「年だから食が細くなった」
だけで判断しないことが大切です。
口や歯の問題、痛み、消化器の問題、さまざまな病気などでも食欲は変化します。
反対に、
よく食べているのに体重が減る
という変化にも注意します。
シニア期では、
飲水量とおしっこ
も重要な観察ポイントです。
以前より、
水をよく飲む
水皿へ行く回数が増えた
おしっこの量が増えた
といった変化がないか見てみましょう。
年齢だけを理由にせず、変化が続く場合には獣医師へ相談します。
「飲む量が増えたから」と、自己判断で水を制限するのは避けましょう。
今まできちんとトイレを使えていた犬猫が、
トイレの手前でしてしまう
間に合わなくなった
違う場所でするようになった
ということがあります。
でも、
「年をとって失敗するようになった」
と決めつけないようにしましょう。
体の痛み、移動のしにくさ、排泄器の病気、認知機能の変化など、さまざまな可能性があります。
一方で、
入口の低いトイレにする
寝床の近くにも設置する
滑りにくくする
など、体の変化に合わせて生活環境を調整できることもあります。
以前より、
甘えるようになった
反対にひとりでいるようになった
夜に鳴くようになった
落ち着かない
同じ場所を歩き回る
昼夜が逆転したように見える
といった行動変化がみられることもあります。
犬では、病的な認知機能低下によって、見当識、社会的な関わり、睡眠・覚醒、排泄、活動、不安などに変化が現れることがあります。
行動の変化も、
「年をとったから性格が変わった」
だけで済ませず、健康状態を見る手がかりとして考えましょう。
飼い主さんだけで、
これは老化
これは病気
と完全に見分けることは難しいものです。
だからこそ重要なのが、
変化を記録して、獣医師へ伝えること。
たとえば、
以前は毎日ソファに上がっていた
1か月ほど前から上がらなくなった
食欲は変わらない
でも3か月で体重が少しずつ減っている
このような情報は、診察時の重要な手がかりになります。
AAFPのシニア猫ガイドラインでも、一回の状態だけではなく、過去からの測定値や変化を継続的に評価することが重視されています。
難しい健康日記を作る必要はありません。
たとえば月に一度、
体重
食欲
飲水量
うんち・おしっこ
歩き方
遊び・散歩
睡眠
気になる行動
を簡単に確認するだけでも十分です。
写真や動画も役立ちます。
特に、
歩き方
階段
ジャンプ
立ち上がり
は、後から比較すると変化に気づきやすくなります。
シニア犬・シニア猫で、
急に食べなくなった
体重が減ってきた
水を飲む量・尿量が増えた
何度も吐く
下痢や便秘が続く
立ち上がりにくい・歩き方が変わった
呼吸が苦しそう
排泄の様子が変わった
夜鳴きや徘徊など急な行動変化がある
元気がなくなった
などがみられたら、
「高齢だから」と決めつけず、動物病院へ相談しましょう。
シニアというライフステージは、病気そのものを意味するわけではありません。だからこそ、年齢だけではなく一頭一頭の状態に合わせて健康管理を考えることが重要です。
「何歳からシニア?」
という疑問に対しては、
猫:10歳を超えるとシニアという区分がひとつの目安
犬:一律の年齢ではなく、予想寿命の最後の25%が目安
というのが現在のガイドラインに沿った考え方です。
でも、もっと大切なのは、
シニアという数字に当てはめることではありません。
昨日までできていたこと。
いつもの食欲。
いつもの体重。
いつもの歩き方。
いつものトイレ。
それを知っているからこそ、
「あれ? 少し変わったかな」
に気づくことができます。
年齢とともに変わる体を知りながら、その子の今に合わせて暮らしを整えていく。
それが、シニアケアの第一歩です。