
「腸」とひとことで言っても、すべて同じ働きをしているわけではありません。
大きく分けると、腸には小腸と大腸があります。
ざっくり言えば、
小腸は、食べ物を消化して栄養を吸収する中心。
大腸は、水分や電解質を吸収しながら便をつくり、腸内細菌による発酵も行われる場所。
それぞれの役割を知ると、下痢や便の変化について考えるときにも、腸の中で何が起きているのかイメージしやすくなります。
小腸は、
十二指腸 → 空腸 → 回腸
の3つに分けられます。
胃から送られてきた食べ物は、まず十二指腸へ。
ここでは膵臓から分泌される膵液や、肝臓でつくられ胆道系から分泌される胆汁なども関わりながら、栄養素の消化が進みます。
そして空腸や回腸を通る間に、分解された栄養素の多くが体内へ吸収されていきます。
食べたものは、そのままでは体が利用できないものも多くあります。
たとえば、
たんぱく質 → アミノ酸など
炭水化物 → 単糖類など
脂質 → 脂肪酸など
というように、消化によって吸収できる形へ分解されます。
そのうえで、小腸の粘膜から体内へ取り込まれます。
つまり小腸は、
「食べたものを、体が使える栄養として受け取る場所」
と考えるとわかりやすいでしょう。
小腸の内側は、単なるツルツルした管ではありません。
粘膜には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる小さな突起があり、さらに細胞表面には微絨毛があります。
こうした構造によって表面積を大きくし、効率よく栄養を吸収できるようになっています。
小腸の内側には、栄養を取り込むための精巧な仕組みがあるのです。
小腸を通過した内容物は、大腸へ進みます。
大腸の重要な仕事のひとつが、水分や電解質を吸収することです。
腸の中の内容物から水分が調整されながら、少しずつ私たちが普段目にする「便」の状態に近づいていきます。
そのため、大腸での水分吸収や腸管内を進む速さなどが変わると、便の硬さにも変化が現れることがあります。
大腸には多くの腸内細菌が存在しています。
腸内細菌は、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届いた成分などを利用して発酵を行います。
その過程でつくられる代表的なもののひとつが、短鎖脂肪酸です。
酢酸・プロピオン酸・酪酸などがあり、腸内環境や腸管の細胞などとの関係が研究されています。
ただし、犬と猫では腸内細菌の構成や食性も異なります。
「この菌が多ければ健康」「善玉菌を増やせばいい」と単純に考えるのではなく、腸内細菌全体の生態系として考えることが大切です。
ここは少し専門的なお話です。
獣医療では、下痢の特徴から、
小腸性下痢
大腸性下痢
を考えることがあります。
もちろん便だけで病気を診断することはできませんが、症状の現れ方に違いがみられる場合があります。
たとえば小腸性下痢では、1回の便量が多くなる、体重減少がみられることがあるなどの特徴があります。
一方、大腸性下痢では、少量の便を何度もする、排便時にいきむ、粘液や鮮血がみられるなどの特徴が現れることがあります。
ただし、実際には小腸と大腸の両方が関係する場合もあります。
便の見た目だけで「小腸の病気」「大腸の病気」と決めつけることはできません。
毎日の便には、消化管を通ってきた結果が現れます。
見るポイントは、
形・硬さ・色・回数・量・粘液・血の有無
など。
さらに大切なのが、
食欲・元気・体重・嘔吐なども一緒に見ること。
「いつもより少し柔らかい」だけなのか、
「下痢が何度も続いて食欲も落ちている」のかでは、意味が大きく違います。
普段から「その子のいつもの便」を知っておくことが、変化に気づく第一歩になります。
最後に整理してみましょう。
小腸
→ 消化と栄養吸収の中心
→ 十二指腸・空腸・回腸に分かれる
大腸
→ 水分や電解質の吸収
→ 便の形成に関わる
→ 腸内細菌による発酵が盛んに行われる
どちらか一方だけが大切なのではありません。
食べる → 消化する → 吸収する → 水分を調整する → 便として排泄する
という一連の流れの中で、小腸と大腸はそれぞれ違う役割を担っています。
強い下痢が続く、血便や黒い便が出る、繰り返し嘔吐する、食欲や元気が低下する、体重が減るなどの変化がある場合は、便だけで判断せず動物病院へ相談してください