
犬猫が最近よく水を飲む、反対にあまり飲まないときは何を確認すればよいのでしょうか。飲水量が変わる理由、おしっことの関係、脱水のサイン、腎臓病や糖尿病などとの関係、受診の目安をわかりやすく解説します。
「最近、よく水を飲んでいる気がする」
「前より水を飲まなくなったかも」
毎日見ているからこそ気づく、こんな小さな変化。
水を飲む量も、犬猫の体調を知る大切な手がかりのひとつです。
ただし、飲水量は体調だけで決まるわけではありません。
食べているフード、気温、運動量などによっても変わります。
大切なのは、
「何mL飲んだ?」だけではなく、「いつものこの子と比べて変わった?」を見ること。
順番に見ていきましょう。
水を飲む量には個体差があります。
そこで毎日の健康チェックでは、
昨日までと比べてどうか
を見てみましょう。
たとえば、
水皿がいつもより早く空になる
水を飲みに行く回数が増えた
長い時間飲むようになった
反対に、ほとんど飲んでいるところを見なくなった
といった変化です。
「なんとなく増えた気がする」でも、毎日一緒に暮らしている人だから気づける大切な情報です。
ひとつの参考値として、Merck Veterinary Manualでは、犬猫を含む多くの哺乳類について、適温環境下で必要な水分量を体重1kgあたり約44〜66mL/日としています。
ただし、ここで注意したいのが、
「飲み水の量=必要な水分量」ではない
ということです。
犬猫は水皿からだけでなく、食事からも水分をとっています。
ですから、
「うちの子は○mL飲んでいないから水分不足」
とは単純に判断できません。
これは特に猫で知っておきたいポイントです。
ウェットフードには多くの水分が含まれています。
Merckでは缶詰タイプのペットフードにはおよそ60〜87%超の水分が含まれる一方、ドライフードでは3〜11%程度としています。そのため、ウェットフード中心の犬猫は、ドライフード中心の犬猫より水皿から飲む量が少なくなるのが一般的です。
Cornellも、ウェットフードを食べている猫は飲み水が少なくなることがあると説明しています。
だから、
「あまり水を飲まない=すぐ脱水」
とは限りません。
まずは食事からとっている水分も考えましょう。
飲水量は毎日まったく同じではありません。
気温
活動量
食事内容
体調
などによって必要な水分量は変化します。
ですから、
「昨日より少し多かった」
という一日だけの変化ではなく、
急に変わったのか
何日も続いているのか
も確認してみましょう。
医学的には、水を異常にたくさん飲むことを多飲(polydipsia)と呼びます。
水をたくさん飲む理由はひとつではありません。
たとえば、
腎臓の病気
糖尿病
ホルモンの病気
薬の影響
などでも飲水量が増えることがあります。
だから、
「水をたくさん飲むのは健康にいいこと」
と決めつけないことが大切です。
ここは、このページで特に覚えてほしいポイントです。
飲水量とおしっこはセットで観察します。
最近水をよく飲むようになったら、
おしっこの回数は?
量は増えた?
猫砂の塊が大きくなった?
トイレに行く回数は変わった?
も見てみましょう。
尿量が増えることを多尿(polyuria)といいます。
病気によって尿量が増え、失った水分を補うために水をたくさん飲むケースがあります。
たとえば猫の慢性腎臓病では、腎臓が尿を濃縮する能力を失ってくると、尿量が増え、それを補うために飲水量が増えることがあります。
代表的なもののひとつが糖尿病です。
犬猫の糖尿病では、
多尿
多飲
食欲の変化
体重減少
などがみられることがあります。
猫でも、糖尿病で飼い主が気づきやすい代表的な変化として、飲水量と尿量の増加が挙げられています。
ただし、
「水をよく飲む=糖尿病」ではありません。
飲水量だけで病気を判断することはできないので、ほかの変化と合わせて確認します。
慢性腎臓病は、高齢猫で特に重要な病気のひとつです。
初期には目立った症状がないこともありますが、進行すると尿を濃縮しにくくなり、
おしっこの量が増える
↓
水分を多く失う
↓
水をよく飲む
という変化が現れることがあります。
「年をとったから水をよく飲むようになった」
と年齢だけのせいにせず、変化が続く場合は動物病院へ相談しましょう。
猫の甲状腺機能亢進症でも、飲水量が増えることがあります。
ほかにも、
体重が減る
食欲が強くなる
落ち着きがなくなる
吐く
下痢をする
などがみられる場合があります。
特に、
「よく食べているのに痩せてきた+水をよく飲む」
という変化があれば、記録して獣医師に伝えましょう。
犬では、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)などでも多飲・多尿がみられることがあります。
Cornellでは犬のクッシング症候群で、
飲水量の増加
尿量の増加
食欲増加
被毛の変化
などがみられるとしています。
もちろん、これらの症状があるからクッシング症候群と決まるわけではありません。
重要なのは、
「最近、以前と違う」
という変化を見逃さないことです。
水を飲まなくなる理由もひとつではありません。
猫では、
元気がない
食欲がない
歯や口が痛い
水飲み場へ行きにくい
多頭飼育でほかの猫との関係がある
などによって、飲水量が減ることがあります。
高齢の猫では、関節などの問題によって水皿へのアクセスが難しくなる場合もあります。
つまり、
水そのものが嫌なのではなく、「飲みに行けない・飲みたくない理由」がある
場合もあります。
体から失われる水分が多く、十分補えないと脱水につながります。
猫では、
元気がない
弱々しい
食欲がない
口の中が乾いている
などが脱水のサインとしてみられることがあります。
嘔吐や下痢でも水分が失われます。
ですから、
飲まない+何度も吐く
飲まない+下痢が続く
飲まない+ぐったりしている
場合は、単に「水を飲ませればいい」と考えず、動物病院へ相談してください。
よく知られている方法に、皮膚を軽く持ち上げて戻り方を見る皮膚ツルゴールがあります。
脱水していると皮膚の戻りが遅くなることがあります。
ただし、これだけで脱水を正確に判断できるわけではありません。
特に高齢猫では、正常な水分状態でも皮膚の弾力が低下していることがあります。
ですから、
皮膚の戻りだけで「脱水している・していない」と決めない
ようにしましょう。
自己判断で飲み水を制限しないでください。
病気によって尿量が増えている場合、犬猫は失った水分を補うために飲んでいることがあります。
Merckも、健康な動物には十分な水を与え、一般的に飲水を制限すべきではないとしています。
多飲・多尿を起こす病気の中には、水分を制限すると危険になるものもあります。
「飲みすぎだから水皿を片づけよう」
とはしないでください。
「最近たくさん飲む気がする」
というときは、可能なら実際に測ってみると役立ちます。
たとえば朝、
水皿に500mL入れる
そして24時間後に残った水を測ります。
交換した分やこぼれた分もできるだけ記録します。
多頭飼育では誰がどれだけ飲んだか分かりにくいため、完全に正確に測れなくても構いません。
「以前より明らかに減りが早い」
という記録だけでも参考になります。
獣医療でも、水を飲む量・排尿回数・尿量の変化は、尿路疾患などを評価する重要な問診項目です。
水の飲み方が変わったら、
いつから?
増えた?減った?
1日にどのくらい飲む?
フードはドライ?ウェット?
最近フードを変えた?
おしっこの回数は?
おしっこの量は?
食欲は?
体重は変わった?
吐いていない?
下痢はしていない?
元気はある?
薬を飲んでいる?
などを記録してみましょう。
特に、
飲水量+尿量+体重
を一緒に記録すると、変化が分かりやすくなります。
次のような変化がある場合は、動物病院へ相談しましょう。
急に水をたくさん飲むようになった
多飲が何日も続いている
おしっこの量も明らかに増えた
体重が減ってきた
食欲にも変化がある
ほとんど水分をとれない
嘔吐や下痢が続いている
ぐったりしている
脱水が疑われる
特に、
「水をよく飲む+おしっこが増えた」
という組み合わせは、腎臓病、糖尿病、内分泌疾患などを調べる手がかりになるため、見過ごさないようにしましょう。
毎日の健康チェックでは、
水を何mL飲んだか
だけを見る必要はありません。
まず気づきたいのは、
いつもより増えた?
いつもより減った?
飲む回数が変わった?
おしっこも変わった?
という、その子自身の変化です。
そして、
飲水量+おしっこ+食欲+体重+元気
を一緒に見てみましょう。
水を飲むことは、毎日の何気ない行動です。
だからこそ、
「いつもの飲み方」を知っておくことが、体調の変化に気づく手がかりになります。
[犬猫の食欲・食べ方|食べない・食べる量が減ったときに確認したいこと]
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