
犬猫がごはんを食べない、食べる量が減ったときは何を確認すればよいのでしょうか。食欲だけでなく食べ方、口や歯、嘔吐、便、体重、元気など毎日チェックしたいポイントと受診の目安をわかりやすく解説します。
いつもならごはんの時間になると飛んでくるのに、
今日は食べない。
少しだけ食べて残した。
匂いは嗅ぐけれど、口をつけない。
そんな変化があると心配になりますよね。
食欲は、犬猫の体調を観察する大切なポイントのひとつです。
でも、
「食べた・食べなかった」だけを見るのではありません。
実は、
食べる量
食べるスピード
食べ始めるまでの様子
噛み方・飲み込み方
食後の様子
にも、体調の変化が現れることがあります。
食べる量には個体差があります。
もともと一度にたくさん食べる子もいれば、少しずつ何回にも分けて食べる子もいます。
だから大切なのは、
「一般的にどのくらい食べる?」
だけではなく、
「いつものこの子と比べてどう?」
です。
たとえば、
いつも完食 → 半分残した
いつもすぐ食べる → なかなか食べ始めない
いつも催促する → ごはんに来ない
こうした変化も立派な健康情報です。
食欲低下というと、
一口も食べない状態
を想像するかもしれません。
でも実際には、
食べる量が減った
途中でやめる
食べるのが遅くなった
好きなものだけ食べる
という変化もあります。
獣医学では食欲が低下した状態をhyporexia(食欲減退)、食べない状態をanorexia(食欲不振・食欲廃絶)などと表現します。
食欲の変化は、多くの病気でみられる非特異的な症状です。
ここはぜひ観察してほしいところです。
ごはんのところまで来る。
匂いも嗅ぐ。
食べたそうにする。
でも、
口に入れて落とす
片側だけで噛む
途中で食べるのをやめる
よだれが出る
口元を気にする
という場合があります。
この場合、単純に「食欲がない」とは限りません。
口の中や歯の痛み、噛む・飲み込む動作に問題がある可能性もあります。
消化器症状を評価するときにも、食べ物を口に取り込む・噛む・飲み込む異常は、口腔、歯、顎、咽頭、食道などの問題を考える手がかりになります。
特に、
食べたそうなのに食べない
場合には、口周りにも注目しましょう。
たとえば、
口臭が強くなった
よだれが増えた
口を気にしている
硬いものだけ残す
食べ物を口から落とす
などです。
Cornell Feline Health Centerも、猫の食欲不振を調べる際には歯や歯ぐきの状態を確認し、歯科疾患による痛みが食べない原因になることがあるとしています。
食べなくなると、
「このフードに飽きたのかな?」
と思うことがあります。
もちろん、
フードを変えた
味や匂いが変わった
食感が好みではない
といったことが関係する場合もあります。
環境変化やストレスが食欲に影響することもあります。
ただし、
急に食べなくなった=好き嫌い
と最初から決めつけるのは避けましょう。
体調不良が隠れていることもあります。
食欲が落ちているときは、
嘔吐の有無
も確認しましょう。
食欲低下と嘔吐は、胃腸疾患をはじめさまざまな病気で同時にみられます。消化器疾患の代表的な症状には、食欲低下、嘔吐、吐出、下痢、便秘、腹痛、体重減少などがあります。
確認するのは、
何回吐いた?
食後?空腹時?
フード?液体?泡?
血はない?
という点です。
食欲だけを見るのではなく、
うんち
も一緒に確認しましょう。
下痢
軟便
便秘
血便
黒い便
粘液便
回数の変化
などがないでしょうか。
食欲低下に消化器症状が伴っている場合、原因を考える重要な手がかりになります。慢性腸症でも、嘔吐・食欲低下・下痢などがみられることがあります。
食べないだけでなく、
背中を丸める
落ち着かない
じっとして動かない
お腹を触られるのを嫌がる
などがないかも見てみましょう。
腹痛も消化器疾患でみられる症状のひとつです。
「食べない+お腹が痛そう」
なら、食欲だけの問題として考えないことが大切です。
ここは非常に重要です。
同じ「食べない」でも、
遊んでいる
散歩にも行く
反応はいつも通り
なのか、
ぐったりしている
寝たまま
隠れて出てこない
反応が鈍い
のかでは状況が違います。
食欲低下と元気消失は、さまざまな病気で同時にみられます。
食欲だけでなく、その子全体を見るようにしましょう。
食欲が少し落ちただけでは、見た目では変化が分からないことがあります。
そこで役立つのが、
定期的な体重測定
です。
たとえば、
食べる量が少し減った
↓
体重も少しずつ減っている
なら、より重要な変化です。
一方で、よく食べているのに体重が減る病気もあります。たとえば猫の甲状腺機能亢進症では、食欲が増えているのに体重が減ることがあります。
だから「食欲」と「体重」はセットで見るのがおすすめです。
猫では特に、
食べない状態を長く放置しない
ことが重要です。
Cornell Feline Health Centerでは、成熟した猫でも食欲不振が24時間ほど続くだけで健康へ大きな影響を与える可能性があるとしています。
また、食べない状態が続くことは、猫の肝リピドーシス(脂肪肝)とも深く関係します。特に肥満傾向の猫では注意が必要です。
ですから、
「猫は気まぐれだから、そのうち食べるでしょう」
と何日も様子を見るのは避けましょう。
成長期の子犬・子猫では、成犬・成猫と同じ感覚で長く様子を見るべきではありません。
特に幼い子猫では食事をとれないことによる影響が大きく、Cornellは生後6週未満の子猫では12時間程度の食事拒否でも生命に関わる可能性があるとしています。
年齢、体格、持病などによっても受診の判断は変わります。
「食べないなら、口に入れてしまえばいい」
とは限りません。
原因によっては、
吐き気がある
飲み込みに問題がある
消化管に異物がある
などの可能性があります。消化管閉塞でも食欲低下や嘔吐、元気消失などが起こります。
特に原因が分からない状態で無理に食べさせるより、食べない理由を確認することが先です。
食欲が戻らない場合には、獣医療では原因を調べたうえで、必要に応じて食欲刺激薬や栄養サポートなどが検討されます。
食欲が落ちたと感じたら、
いつから?
どのくらい食べた?
まったく食べない?少しは食べる?
水は飲んでいる?
食べたそうにはする?
噛みにくそう?
よだれは?
吐いた?
うんちは?
元気は?
体重は?
フードを変えた?
生活環境に変化はあった?
を記録してみましょう。
「食欲がないです」だけより、
「いつもの半分くらいを2日間」
のように伝えられると、診察時にも役立ちます。
特に、
まったく食べない状態が続く
食欲低下が改善しない
ぐったりしている
何度も吐く
水も飲めない・飲んでも吐く
下痢や血便がある
お腹を痛がっている
体重が減っている
口や歯を痛がっている
異物・毒物を口にした可能性がある
場合は、動物病院へ相談してください。
そして猫では、食べない状態を何日も待たないことが重要です。食欲不振そのものが重大な健康問題につながることがあります。
毎日の健康チェックで見るのは、
食べた・食べなかった
だけではありません。
食べる量
食べる速さ
食べ始めるまでの様子
噛み方
飲み込み方
食後の様子
にも注目してみましょう。
そして、
食欲+元気+体重+嘔吐+うんち
を一緒に見る。
そうすると、
「なんとなく今日は違う」
という小さな変化に気づきやすくなります。
毎日の健康チェックで大切なのは、一般的な「正常」だけではなく、その子自身の“いつも”を知っておくことです。