シニア犬・シニア猫の運動と筋力|動かなくなった・足腰が弱くなったときに考えたいこと

シニア犬・シニア猫の運動と筋力について、年齢とともに起こる筋肉量や活動量の変化、散歩や遊び方、足腰の衰え、関節の痛み、家庭で確認したいサインと運動するときの注意点をわかりやすく解説します。


シニア犬・シニア猫の運動と筋力|動かなくなった・足腰が弱くなったときに考えたいこと

「最近、散歩が短くなった」

「ソファに上がらなくなった」

「猫が高いところへジャンプしなくなった」

年齢を重ねると、犬猫の動き方にも変化が現れることがあります。

でも、

「シニアだから動かなくなるのは当たり前」

と決めつけないことが大切です。

筋肉量の変化だけでなく、関節の痛みや病気などによって動きたくなくなっている可能性もあります。

そして、動かない期間が続けば、さらに筋肉を使う機会が減ってしまいます。

シニア期だからこそ、

「どのくらい運動させるか」ではなく、「今のその子が無理なく動けているか」

を見ていきましょう。


1|シニアになると筋肉は減るの?

年齢とともに、犬猫では除脂肪体重(Lean Body Mass)や筋肉量が減少することがあります。

AAHAのシニアケアガイドラインでは、加齢に伴う除脂肪体重の減少をサルコペニアとして説明し、シニア犬では除脂肪体重が減少する傾向があり、猫でも高齢期に大きく減少する場合があることを示しています。

ただし、

「シニアだから筋肉が減って当然」

で終わらせるのは避けたいところです。

病気に伴って筋肉が減少している場合もあるため、体重だけでなく筋肉の状態も見ていきます。


2|体重が同じでも筋肉が減っていることがある

ここは前回の「食事と体重管理」ともつながります。

たとえば、

以前:筋肉がしっかり+脂肪は適度
現在:筋肉が減少+脂肪が増加

していても、体重計では同じ「5kg」と表示されることがあります。

だからシニア期では、

体重だけではなく、体型と筋肉も見る

ことが重要です。

WSAVAでは、体脂肪の状態を見るBCSとは別に、筋肉の状態を評価するMCS(Muscle Condition Score)を用いています。筋肉は病気や加齢によって変化するためです。


3|筋肉はどこを見ればいい?

毎日の生活では、難しい測定をする必要はありません。

たとえば、

背骨のまわり
肩まわり
腰まわり
後ろ足

などを以前と比べてみます。

「後ろ足が細くなった気がする」

「背中の骨が以前より分かりやすくなった」

といった変化も記録しておきましょう。

ただし、見た目だけで筋肉減少の原因を判断することはできません。

気になる変化がある場合は、動物病院で体重、BCS、MCSなどを含めて評価してもらうと分かりやすくなります。


4|「動かなくなった」のも大切な変化

シニア期に注目したいのは、筋肉そのものだけではありません。

どう動いているか

も重要です。

たとえば、

散歩へ行きたがらなくなった
歩く速度が遅くなった
散歩の途中で止まる
階段を避ける
ソファに上がらない
猫が高い場所へ行かなくなった
立ち上がるまで時間がかかる

など。

AAHAもシニア犬猫の健康評価では、運動、動作、遊び方などを詳しく確認することを勧めています。


5|「年だから」ではなく、痛みがないかを見る

シニア犬猫の活動量が減る理由のひとつに、

痛み

があります。

特に関節や背骨などに慢性的な痛みがあると、

「痛い」と声を出すのではなく、

動かなくなる
ジャンプしなくなる
階段を避ける
寝ている時間が増える

といった行動の変化として現れる場合があります。

AAHAは、飼い主が「普通の老化」と思っている変化の中に、慢性的な痛みによるものが含まれる可能性があると注意しています。


6|猫の関節の痛みは分かりにくいことも

猫では特に注意したいポイントです。

猫は関節に問題があっても、

分かりやすく足を引きずるとは限りません。

AAHAのシニアケアガイドラインでは、研究上、60%を超える猫で少なくとも1つの関節に変形性関節症が認められた報告が紹介されています。一方、猫では診察時にも関節の異常が分かりにくい場合があります。

だからこそ、

冷蔵庫の上へ行かなくなった
キャットタワーの最上段を使わない
一度でジャンプしなくなった
毛づくろいが減った

など、家庭での小さな変化が重要な情報になります。


7|シニアだから運動させないほうがいい?

一律に運動をやめる必要はありません。

その子の状態に合った運動は、筋肉や関節の動きを保つために役立ちます。

AAHAも、移動能力やエネルギーの状態に合わせて運動を調整し、定期的な低負荷の活動は筋肉や関節の動きを保つ助けになるとしています。

大切なのは、

若いころと同じ運動をさせることではなく、今の体に合わせること。


8|シニア犬の散歩はどうする?

シニア犬でも、散歩を楽しめる子はたくさんいます。

ただし、

距離
時間
速度
坂道
階段
気温

などを、その子の状態に合わせます。

若いころに1時間歩いていたからといって、

「今も1時間歩かせなければ」

と考える必要はありません。

たとえば長時間を一度に歩くより、

短めの散歩を、その子の状態に合わせて行う

ほうが適している場合もあります。

重要なのは「○分歩けば健康」という数字ではなく、

歩いているときと、歩いたあとの様子

を見ることです。


9|散歩中はここを見る

散歩では距離だけでなく、

歩く速度
足の運び
左右差
立ち止まる回数
座り込まないか
帰宅後の疲れ方

などを見てみましょう。

たとえば、

行きは元気
帰りになると極端に遅くなる

という変化もあります。

「散歩できたから大丈夫」ではなく、

どんなふうに歩いたか

まで観察します。


10|シニア猫にも運動は必要?

猫の場合は、犬のように「散歩○分」と考えるより、

日常の遊びや移動

を活用します。

たとえば、

おもちゃを追う
部屋の中を歩く
低い場所へ上がる
食事場所まで移動する

なども活動です。

シニア猫では、若いころのような激しいジャンプを求めるのではなく、

その子が自分から動きたくなる環境をつくる

という考え方が向いています。


11|「高いところへ上らせる」必要はない

猫だからといって、

高いキャットタワーへジャンプさせなければ運動にならない

わけではありません。

シニア猫では、

低いステップ
途中の台
滑りにくい足場

などを使って、少ない負担で移動できるようにする方法があります。

目的は、

若いころと同じ動きをさせることではなく、動ける範囲を保つこと。

です。


12|床が滑っていない?

意外と大きなポイントが、

床です。

フローリングなど滑りやすい床では、足腰に不安のある犬猫が踏ん張りにくくなることがあります。

AAHAはシニア犬猫の移動を助ける環境調整として、

ラグやヨガマットなどによる滑りにくい足場、スロープ、適切なベッドなど

を挙げています。

「歩きたがらない」と思っていたら、

歩きにくかった

という可能性も考えてみましょう。


13|段差も見直そう

若いころには簡単だった、

玄関の段差
ソファ
ベッド
階段
猫トイレの入口

などが、シニア期には負担になることがあります。

必要に応じて、

スロープをつける
低いステップを置く
トイレの入口を低くする

など、環境を今の体に合わせていきます。

環境調整もシニアケアの重要な一部です。


14|動画を撮っておこう

これはかなりおすすめです。

シニア犬猫の、

歩いているところ
立ち上がるところ
階段を上るところ
ジャンプするところ

を、ときどき動画に残しておきましょう。

AAHAも、家庭で撮影した歩行やジャンプの動画は、筋骨格系の痛みや移動能力の変化を評価するうえで役立つとしています。

診察室では緊張して普段と違う歩き方になることもあります。

家庭での動画なら、

「いつもの動き」

を獣医師に見てもらえます。


15|運動後の様子もチェック

運動中だけでなく、

そのあと

も見てみましょう。

たとえば、

散歩後に極端に疲れている
翌日に動きたがらない
足をかばう
立ち上がりにくそう
呼吸がなかなか落ち着かない

など。

「できたかどうか」だけではなく、

その運動がその子にとって無理のない負荷だったか

を見ることが大切です。


16|運動量は「何分」が正解?

これは一律には決められません。

シニア犬猫では、

年齢
犬種・体格
筋肉量
体重
関節の状態
心臓や呼吸器などの病気
普段の活動量

によって適切な運動が異なります。

シニアケアそのものが、犬種・体格・寿命・健康状態によって個別に考える必要があります。

だから、

「シニア犬は1日○分」

という数字だけを目標にしないようにしましょう。


17|リハビリという選択肢もある

関節疾患や慢性的な痛みなどがある犬猫では、獣医師の診断のもとでリハビリテーションが選択肢になることがあります。

AAHAでは、シニア犬猫の慢性的な筋骨格系疾患に対して、リハビリテーションが痛みの管理や移動能力、バランスの改善を支える方法のひとつとして挙げられています。

自己流で運動量を増やすのではなく、その子の状態に合わせた方法を相談しましょう。


18|「運動+食事」の両方を見る

筋肉を考えるとき、

運動だけを見るのでは不十分です。

シニア期では、食事・栄養状態も筋肉量に関係します。

AAHAはシニア犬猫で除脂肪体重の減少がみられることや、栄養状態・タンパク質などを含めた個別の栄養管理の重要性を示しています。

だから、

動くこと
食べること
体重
筋肉

をセットで見ていきます。

これは前の記事、

「シニア犬・シニア猫の食事と体重管理」

と一緒に読むと理解しやすくなります。


19|こんな変化は動物病院へ

シニア犬・シニア猫で、

急に歩かなくなった
立ち上がれない
足を引きずる
強く痛がる
階段やジャンプを急に避けるようになった
散歩中に極端に疲れる
呼吸が苦しそう
ふらつく
筋肉が目立って減ってきた
食欲や体重も落ちている

などがあれば、

「シニアだから」と決めつけず、動物病院へ相談しましょう。

シニア期の移動能力低下には、関節の変化だけでなく、さまざまな病気が関係する可能性があります。


まとめ|「たくさん運動」より「その子らしく動ける体」を

シニア期の運動で大切なのは、

若いころと同じように運動させることではありません。

見るのは、

歩けている?
立ち上がれる?
ジャンプの仕方は変わった?
筋肉は減っていない?
痛そうではない?
運動したあとも元気?

という毎日の変化です。

そして、

動かなくなった=年齢のせい

と決めつけないこと。

痛みや病気が隠れていないか確認しながら、その子の今の体に合わせて、

無理なく動ける環境と習慣をつくる。

それが、シニア犬・シニア猫の運動と筋力を考える基本です。

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